だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
「ちゃんと復帰するから、待っててよね」
『わかった。待ってる。みんなも、な』
その言葉に小さく、うん、と応える。
みんなも待っている。
やっぱり早く仕事をしたい、と思った。
まだご飯を食べていないだろう森川に軽く謝って、電話を切る。
少し名残惜しそうだったけれど、それよりも仕事があることを優先してくれる森川でよかった。
櫻井さんならどうするだろうな、と少しだけ考えてしまった。
そして、すぐにその考えを頭から振り払った。
「さて」
座ったままで固まった身体を伸ばして、うーん、と声が出る。
私もそろそろお昼ご飯にしよう。
天気がいいので、どこかでお弁当を買って公園に行くのもいいかもしれない。
外でご飯を食べられるうちは、なるべくそうしたい。
一人で知らないお店に入るのも嫌いではないが、公園で食べるご飯の方が気分がいい。
山の上でなければ、風が冷たくて寒いなんてことはないだろう。
ぽかぽかしたお日様の下で、のんびりと過ごすことが出来るだろう。
車に向かって歩いていると、ジーンズのポケットで携帯が震えた。
誰からだろう、と思って取り出す。
メール受信のマークが光っていた。
『櫻井 圭都』の文字。
森川と電話している時、近くにいたのかもしれない。
メールを開く。
少しだけ、緊張していた。