だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
「・・・これ」
開いたメールには、文面が何もなかった。
ただ、そこには一枚の写真。
朝焼けと雪景色。
それと、湖に逆さまに移った中島。
オレンジに染まるその景色は、私が思い浮かべたままの姿だった。
洞爺湖の朝焼け。
撮影した日付を見ると、去年の大晦日になっていた。
一人で行ったとは考えにくい。
――――――杉本さんと?――――――
どうしてこんなことを考えているのだろう。
ふるふると首を横に振って、その想いを振り切る。
今までは、こんなこと気にもならなかったのに。
明らかに、櫻井さんを意識している考えしか浮かんでこない。
櫻井さんのことを、考える時間が増えているせいかもしれない。
大切にされている、と感じれば感じるほど、必要以上にその人のことを考えてしまう。
ただ、自分がまだこんなに揺れることが出来るのだ、と少し安心もしている。
感情が正常に動いているのだ、と。
この写真は、きっとプレゼン資料の原案段階で使われたに違いない。
携帯で撮った写真とは思えない綺麗さだ。
朝焼けの洞爺湖を知っている人は沢山いるけれど、この人もきっと同じ気持ちで見ていたのだろうな、と思う。
そうでなければ、こんな目線で焼き付けることは出来ないはずだから。