だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
残り香...ノコリガ
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天気のいい公園で、大きなハンバーガーを頬張りながら想い出していた。
あの時の櫻井さんからは、かすかに私の匂いの混ざった香りがしていた。
どこか切なくて、どこか懐かしい匂いが。
タバコの香りも、お酒の匂いもしていたのに、それに紛れて少しだけ。
あの人との『これから』を、ゆっくり考えた。
でも結局、それらしい答えにはたどり着くことは出来なかった。
それは、私にとっていいことだったのかもしれない。
突き放すことも出来なければ、想いのまま縋りつくことも出来ない。
これが、今の私の正直な気持ち。
まだ白と黒に分けられるほど、はっきりとしたものではない、とわかった。
いや、わかっていたけれど更に実感したのだ。
この答えを受け止めてくれるわけはないけれど、こういう気持ちなのだ、と誰かに聞いて欲しいと思った。
木陰のベンチは、少し凛とした空気が流れていた。
大きなハンバーガーに、皮付きのポテト。
オレンジジュースと一緒に胃の中に飲み込んでいった。
公園に人はまばらで、それでも観光客らしき人の姿はちらほらあった。
いつ来ても、函館は沢山の人で溢れている。
情緒溢れるこの土地を、沢山の人が訪れている証なのだ、と思った。