だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
そんな虚しい現実の中で、七年も私のことを考えてくれていたのだと知った。
純粋に、嬉しい、と想った。
もちろん、杉本さんのように櫻井さんを支えてくれた人は沢山いたのだろうけれど。
一人では埋められないものが大きければ、それを救ってくれる人を求めるのは当然だと思う。
ぬくもりだけでも。
その一瞬だけでも。
そんな人間らしさを知っているからこそ、櫻井さんの想いの強さを知った。
受け入れられるかどうかは、まだわからないとしても。
ゆっくり考えると、後ろ向きな考えばかりが浮かぶのは、私の悪いところだと思う。
こんなに天気のいい公園で、虚しいことばかりが頭を巡る。
「気持ちいいな」
口に出す事で、自分がそう想っているのだと確認できる。
ぐるぐると黒い考えが渦巻いていようと、言葉になるのは簡単なことばかりだ。
どれだけ言葉が無力なのかを思い知りながら、ゆるやかな時間の流れを感じていた。
おもむろに携帯電話を取り出す。
何をするわけでもなく、ただ画面を見つめていた。
電話帳の中の名前を探す。
今はもう繋がらない、大切な名前を。
辿っては、また消せずにそのままになっている。
湊の名前。
消す日が、近づいている気がした。
眩しい光が反射して、時折消えそうに画面が揺れる。
それが、とても切なかった。