だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
公園を出た後、海岸沿いのベンチがある小さな広場に車を停めた。
遠くに見える小さな雲以外はない、青が少し薄くなった空を見上げる。
海沿いにいると少し風が冷たいけれど、目の前に広がる景色が胸を震わせた。
公園を出てから車でぶらぶらと市内を走り回り、陽が傾き始めたのを見計らってこの場所にきた。
赤が濃くなってきたオレンジ色の夕日が、海の向こうにゆっくりと沈んでいく。
波が揺れる度に光が反射する。
風が吹くたびに、自分の髪が舞って景色をぼかす。
時間が経つごとに色濃くなってゆくその景色が、一日の終わりであることを教えてくれる。
夕日よりも、朝日の方が切ない、と私は想う。
どんなに眩しく煌いていても、朝日は始まりと同時に終わりへのカウントダウンが始まる。
一日に始まりにそんなことを考える人はいないだろうけれど。
それでも、朝の光が眩しければ眩しいほど、幸せを連れてくれば来るほど、翳りを目立たせてしまう。
翳らせてしまうくらいなら、最初から始めなければいいのかもしれない。
一日が終わっていくのは、明日が始まっていくということだ。
胸に焼きつくような赤が苦しさを連れえ来ても、夜の帷がおりれば闇に紛れて溶かしてくれる。
静かな宵闇の中に、隠してくれる。
そこから光を待つだけでいい。
それを私たちは、何度でも繰り返す。
始まりも。
終わりも。
そうして今、ここにいる。
あの日、立っていた場所に。