だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
「特別だと想える日々が、当たり前に続くと想ってた。でも本当は、当たり前だと想えた日々が、私にとって特別だった」
「・・・それは?」
「これは、うちの会社で作ったコピーなんだよ」
「いつのコピー?」
「大分前のだよ。僕が入社してすぐくらいに社長賞もらったヤツ」
「社長賞?そんなの貰ってたの?」
「貰ってたの」
簡単に社長賞というけれど、きっと凄いことなんだろうな、と想った。
それを簡単にやってのける湊を、とても誇らしく想った。
「もう一度、言って」
「特別だと想える日々が、当たり前に続くと想ってた。でも本当は、当たり前だと想えた日々が、私にとって特別だった」
当たり前だと想えた日々。
それが、自分にとって特別だった。
それは、なんて。
「素敵な、言葉だね」
「時雨といる日々が当たり前に続けばいい。それを、毎日特別なことなんだ、と想いたい。僕たちにも、その権利はあるんだよ。たとえ兄妹だとしても」
「たとえ、兄妹だとしても?」
「そう。お父さんも母さんも大切なんだ。でも、それより大切なものが出来たんだよ。そのことを、一番最初にわかって欲しいんだ」
湊のその言葉に、何を伝えていいのか分からなくなった。
ただ、夕焼けに浮かぶ湊を見つめていた。