だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
大切だからわかって欲しい。
そんな当たり前のことを、必死に伝えてくれる湊。
震える声も揺れるその瞳も。
本当は、湊も不安なのだ、とわかってしまった。
だから、湊のその言葉に大きく頷いた。
私だってわかって欲しい。
私だって、伝えたい。
夕日に反射する私の涙を、冷たい指でそっと拾ってくれた。
声も上げず、たださらさらと流れる涙に、自分の意思の強さを知った。
「・・・俺を、誰より幸せにしてくれよ。時雨がいないと、幸せになれない」
そう言った湊をしっかりと抱き締めた。
湊が自分を抑えきれない時にだけ発する言葉。
『俺』と言う単語。
湊だって同じように不安に違いない。
私が不安になればなるほど、両方を無くす不安に潰されてしまうだろう。
そんな湊の、傍にいたい。
この人をどうしようもない程、いとしいと想った。
肩に落ちる不安の粒に気が付かないふりをして、背中に回した自分の腕に力を込めた。
湊の弱さを私が受け止める、と伝えたくて。
「自分の幸せが一番大切だ、って。教えてくれてありがとう」