だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
あやすように呟く。
きっと聴こえているはずだから。
だから、伝えよう。
お父さんよりもママよりも、大切なものがあるんだということを。
誰よりも、湊が大切なんだ、ということを。
「私、わかったことがあるんだ」
「・・・何?」
「私、湊よりも大切なものなんてなくなっちゃったみたい」
「時雨・・・」
「どんなに反対されても、どんなことを言われても。湊との事を、お父さんとママに認めてもらおう。どれだけ時間がかかっても」
やっとの想いで私にしがみついた湊は、少しだけ震えていた。
抱き締める腕の強さが、湊の不安を教えてくれた。
どんなに大人の顔をしていても、不安になる湊。
本当は誰より繊細な湊。
純粋さと儚さ、正直さ。
私しか知らない、弱い部分の湊。
『私がいないと幸せになれない』と言った、湊の本音。
湊がこんな風に弱い部分を見せてくれることなんて、今までなかった。
それほどまでに心を許してくれたことに、不安なんてどこかへ行ってしまった。
本当はね。
ずっと、こうして甘えて欲しかった。
私ばかりが甘えるんじゃなくて、私だって湊のことを支えたかった。