だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
じっと見つめられて、動くことが出来なかった。
太陽はもうすっかり沈んでしまって、赤い光ばかりが見える。
影がなく空の端だけが明るく見えた。
「二人に認めてもらったら、俺は時雨をもう手離せない」
「離さないでよ」
「それは、この先ずっと隣にいるということなんだよ」
この先ずっと、隣にいるということ。
それは――――――
「最期の時まで、こうして見つめてくれる?僕の隣で」
言葉が胸に響くのが、もっと早ければ良いのに、と想った。
理解をするための時間がもどかしくて。
自分の言葉も上手く伝えたかった。
「・・・湊、それって」
「わかってよ。プロポーズなんだから」
海の見える場所、空を染める夕日。
露が降りたような、時雨の後の気配。
目の前の湊。
こんなに幸せで、いいのだろうか。
「返事は?」
聞かなくてもわかっている、と湊の笑顔が教えてくれた。
それなのに、私の口から出るその言葉を聞かないと、湊が安心しないことも知っていた。
私は、どうしてこんなに泣き虫になってしまったんだろう。
色んな事を我慢できる、と想ってた。
人前で自分の本当の気持ちを出してはいけないと想ってた。
甘えることは、迷惑をかけることだと想っていた。
湊はそれを、大丈夫、と言って簡単に崩してしまった。
本当の私を受け止めてくれた。