だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
「また、連絡するよ」
沈黙に耐え切れずにそう言った。
何を言われても、どうすることも出来ない。
それをわかっていて、お父さんも、そうか、とだけ言った。
通話を切った携帯電話は明るく光を放つけれど、その光があまりに作り物の光りすぎて、なんだか苦しくなった。
そのまま画面を隠すように折りたたむ。
何の音もしない部屋の中で、一人窓を見ていた。
心配されればされるほど、私の心は頑なになっていく。
困らせるばかりだとわかっていても、どうすることも出来なくなるばかりだった。
家族だからこそ、言えないことが沢山ある。
それは、みんながわかっていた。
――――――プルルルルルル――――――
驚いて振り向く。
胸に手を当てて、冷静さを保とうと必死になっていた。
何がどうして部屋の電話が鳴っているのかわからなかった。
今日はフロントに何もお願いしていない。
とりあえず一度、息を吐く。
落ち着かない心臓は、少し痛いくらいに動いている。
「出なくちゃ、ダメだよね、これ」
不審に思いながら見つめている電話は、まだ鳴り続けていた。
そっと手を伸ばして受話器に触れる。
手に取った受話器は、自分の手と同じくらい冷たかった。