だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
それから二人で冷蔵庫の中が空になるまでお酒を飲んだ。
二人とも強いのでほろ酔い程度の気持ちのいい酔い方だったけれど、色んな話をした。
湊のことばかり。
どんな性格だった、とか。
口癖、とか。
意地悪なところ、とか。
笑い方、とか。
好きなもの、とか。
櫻井さんから語られる湊の姿は、私の知っている湊だった。
知らないことは、とことん聞いた。
女の人のことだったり。
学校での湊だったり。
新しい湊を知る度に、どれもこれも湊らしい行動ばかりで安心する。
たとえ胸が苦しくなることでも、私に向けられていた湊が嘘ではない、と理解するには十分だった。
「結局、湊はずるいんですよ」
最後のワインを櫻井さんのグラスと自分のグラスに分け合って、私は言った。
「優しい顔して色んな事をごかまして。なのに、私が何か隠すとそれは許さない、って顔して簡単に引き出しちゃう、みたいに」
「それはそうかもな。湊さんって天使の顔して完全悪魔寄りだろ?見た目に騙されると、ほんと痛い目みるって」
結局、悪口のようになってしまった。
ただ、その悪口が愛情であることを二人とも知っていた。