だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
「簡単に甘えられるようになるなら、とっくにしてますよ・・・」
ちょっと拗ねるようにそう告げる。
私が最も不得意とするもの。
それが『甘える』だ。
『甘える』事と『縋る』事。
似ているけれど違う、と今はわかっている。
それでも、ちょっと前の私にとってそれはイコールだったので、まだ気が引ける。
「櫻井君、きっと寂しく思ってるわよ。そんなに頼りないか、って」
水鳥さんが言うんだから、そう感じているのは間違いないだろう。
頼りないなんて、思ったことは一度もない。
むしろ、頼りになり過ぎて困っている。
際限なく、甘えてしまいそうで。
「頼りないなんて、思ってないです。ただ、甘えるの苦手なんです・・・」
小さな声で下を向いていた。
水鳥さんはそんな私の頭をぽん、と優しく撫でてくれた。
その綺麗な手は、とても安心する温度だった。
「無理に甘えることはないわ。でも、想っていることは伝えてあげないと可哀相ね。櫻井君、知らないんでしょ?シグがこんなに頼りにしてること」
こくん、と小さく頷く。
なんだかいたたまれなくて、お猪口をくいっ、と飲み干した。