だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
「言葉足らずでは、相手が不安になるばかりよ。お試し期間だろうと、相手を気遣ってあげなくちゃ」
その通りだ、と思った。
むしろ、『お試し期間』というカタチでとことん甘えているのに、今更小さいことを取り繕っても仕方がないことだった。
きっと、櫻井さんには言わなくても伝わることは多いだろう。
目の前のお猪口に熱燗が湯気を立てて注がれる。
水鳥さんとお酒を飲むと、かなりのハイペースになるので少し酔いが回ってきた。
「帰りに呼んであげなさい。それだけで、喜ぶはずだから」
水鳥さんに言われると、素直に言うことを聞ける自分がいる。
これも、女の貫禄ってものなんだろうな、とぼんやり思っていた。
「水鳥さん。一人で寂しい夜、ってありますか?」
唐突な私の言葉に、少しきょとんとした顔をしていた。
うーん、と考えてお猪口を弄んでいた。
「あるわね」
きっぱりそう言った顔は、なんだか凛々しく見えた。
「そんな時、どうしますか?」
一人ではどうしようもない時。
どうやって、それを乗り切るのか興味があった。
とても、知りたかった。