だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
覚悟を決めて、櫻井さんを見つめる。
私を見下ろすその顔は、もうすでに拗ね気味だ。
ちょっと可愛いかも、と思ったことは、本人には絶対に言わないでおこう。
「圭都さん、送って・・・くれますか?」
精一杯の台詞を言った。
だんだん恥ずかしくなって、少し目線を逸らしてしまった。
自分でこんなことを言うのは、やっぱり苦手だ、と強く思った。
「ですってよ?櫻井君?」
水鳥さんのその声にも、櫻井さんは反応しない。
恐る恐る櫻井さんの方を向く。
ちょっと赤くなりながらも、私をじっと見ていた。
「あの・・・、圭都さん?」
もう一度問いかける。
そして、ようやく櫻井さんは口を開いた。
「お前、反則。水鳥さんに仕込まれるなよな。反応に困る」
その声は、不満そうな言葉を吐きながらも嬉しさが滲み出ていた。
そんな櫻井さんを見て、水鳥さんと二人で目を合わせて笑った。
どうやら、私と櫻井さんは似たもの同士のようだ。
水鳥さんには、お見通しだったのだと、今気付いた。