だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
約束...ヤクソク
入り口で待っている水鳥さんのところへ二人で向かう。
途中何か会話をするわけではないけれど、櫻井さんの少し後ろを歩いていた。
「お待たせしてすみません、水鳥さん。お会計いくらでしたか?」
「今日はいいわよ。コレももらったし」
そう言って、右手に持っている紙袋を少し持ち上げていた。
中身は、日本酒。
優希が仙台に旅行に行ったので、お土産に買ってきてくれたものだ。
お願いをして、美味しい日本酒を選んでもらった。
「そんな。それはいつもお世話になってるお礼なので・・・」
「いいのよ。その気持ちだけで」
そう言って嬉しそうに水鳥さんは笑っていた。
私たちのことを本当に心配してくれている。
だから、何かお礼がしたかったのだ。
お試し期間が始まったことを、水鳥さんは本当に喜んでくれた。
そして、湊のことも憶えていてくれた。
大切な想い出を私に教えてくれたのだ、と想う。
この人には、いつも支えられている。
大人の女性。
こんな風になりたい、と強く想う。
不意に頭に大きな手の感覚が乗る。
ぽんぽん、という振動。