だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
「お前は遠慮してばかりだな」
「そうよ、シグ。年上には甘えるべきだわ」
櫻井さんは少し困ったように笑っていた。
それに、水鳥さんもくすくすと笑っている。
色んな意味を含んで、水鳥さんはそう言った。
大人な二人に囲まれて、なんだか恥ずかしくなってしまった。
自分よりも沢山のことを知っている人たち。
尊敬できる人が沢山いて、本当に嬉しいと思う。
「では、遠慮なく。ご馳走様でした。また来ましょうね」
「どういたしまして。また一緒に飲みましょう」
入り口を抜けながら二人で挨拶を交わす。
やっぱり女子会は素敵だ、と思う。
水鳥さんは、私の気持ちをしっかり汲み取って話をしてくれる。
そんな優しさに、とても感謝していた。
外は風が強くて、冬の匂いがしていた。
まだ雪が降っていないので、その分とても冷たく感じた。
「水鳥さん、送って行きますよ。俺、車で来てるので」
櫻井さんは車の鍵を手で弄びながら、水鳥さんにそう告げた。
水鳥さんは少し考えたふりをして、すぐに首を横に振った。
本当は返事が決まっていたかのように。