だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
「湊のお墓に、行って来ようと想うんです」
その言葉に、少しだけ圭都さんが緊張していた。
ハンドルを握る手が、ぎゅっと鳴ったのを聞き逃しはしなかった。
「今まで、一度も行っていないんです。でも、今なら向かい合える気がするんです」
二ヶ月前までの私は、こんなこと想いもしなかった。
いつまでも、その場所に立つことがなくても構わないと想っていた。
でも、圭都さんが教えてくれたから。
向き合うことで大切に出来ることもあるのだ、と。
認めることで、前に進もうとすることが出来るのだ、と。
湊のカケラを集めて大切に出来ればいい。
それがどんなに苦しいものでも、沢山のカケラを見つけたい、と想った。
湊は、本当のお父さんと一緒に眠っている。
きっと湊に逢いに行っても、想い出すのは湊のパパのお参りに行ったことだと思う。
家族四人での想い出なのだと思う。
そこに湊が眠っていると、認めることは出来なくてもそれでいい。
その場所に立てたことが、きっと私の背中を押してくれると思うから。