だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版





「一人で、平気か?」




赤信号で停まっている車内で、心配そうに聞かれた。

その言葉に、しっかりと笑顔で応えた。




「一人で行きます。それが、きっと一番必要なことだから」




わかった、と小さく言った言葉は不安を含んではいなかった。

私が笑ったことできっと何かを感じてくれたのだろう、と思った。




「湊に逢ってから、連絡します」




出来るだけ、そっと伝わればいい、と思った。

今でもやっぱり湊を優先してしまう。

そんな私の我が儘が、出来るだけこの人の気持ちをえぐらない様にと願った。




湊のお墓の場所を、圭都さんが知っているわけがない。

それは、ママが私のためにしてくれたことだから。


どんなに湊と仲のいい人でも、私が逢いに行けるようになるまでその場所を教えない。

そんなママとお父さんの優しさに守られている場所。




だから、知っているのは私たち家族だけ。

たった一人で湊に向き合う、大切な場所。

湊を愛してくれていた、湊のお父さんの場所。



いつか、一緒に行ける日が来るかもしれない。

でも、今は一人で行かなくてはいけない。



私の我が儘に圭都さんは、しょうがないな、と言って笑ってくれた。

その声が私に、頑張れ、と言ってくれていた。




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