だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
対面...タイメン
土曜日の朝。
バスに揺られていた。
朝から空は重くて、たまに覗く真っ青な空は適当に塗った絵の具のように現実味がなかった。
鞄の中には、小さな折り畳み傘が入っていた。
それと、真っ白な小さな瓶。
湊の灰が詰まっている。
本当の湊のカケラ。
私だけのための湊。
部屋から外に出したのは、初めてだった。
私の部屋の箪笥の上で、写真と一緒に飾ったままだったから。
何をするわけでもなく、ただ傍にいて欲しくて。
十一月最後の週末は、明日から雪が降ると天気予報で言っていた。
今日はやけに冷たい風が、優しく吹いているようだった。
秋用のトレンチコートではなく、冬用のベージュのコートに白いストールをまいている。
温かい格好をしなければ、小高い丘の上に建つあの場所に長くはいられないだろう。
お父さんとママに何も言わずにその場所を目指す。
二人に伝えたら、驚いてついて来ると言いかねない、と思ったので黙っていた。
いつもは車で行く。
けれど、今日はバスに乗っている。
揺れる座席に身をゆだねて、窓の外の流れる景色を見つめていた。
もうすぐこの辺りも真っ白に染まる。
そして、また春まで逢えなくなってしまうのだろう。