だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
バスを降りてすぐに入り口の門がある。
そこをくぐって、中に入っていく。
広く吹きさらしになっている大きな場所。
冷たい風が、私の髪を舞い上がらせた。
「寒い・・・」
肩をすくめて、少し身震いをする。
こんな時期に来たのは、初めてだ。
いつもはお盆やお彼岸に来ているので、寒さを感じることはなかった。
七年振りに足を踏み入れた場所は、時間が止まっているかのように何の変化もなかった。
ここは、不変の力を持っているのだと思った。
緩やかな坂道を登り、頂上を目指す。
高い場所にある角の灰色の石。
入り口の門から真っ直ぐに続くその道を、一歩ずつ進んでいく。
胸の中が重くなる。
足取りと一緒に。
それでも、この場所でしっかり向き合うと決めた私は、必死で足を踏み出した。
この場所を、私はとても気に入っていた。
見晴らしのいい土地。
空が近い場所。
優しい空気が流れる空間。
目の前の灰色の石をじっと見つめる。
あと少しで、辿り着く。
やっと来れた。
まだ、怖いけれど。
でも、本当は来てあげたかった。
来なくてはいけない場所だった。