だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
ただ流れる涙をどうすることも出来なくて、そのままでいた。
時折触れる冷たい風に、優しく涙が飛ばされていった。
こぼれるたびに、ふっと飛んでいく。
その水滴が、目の端を横切っていった。
なんていいタイミングで風がさらっていくんだろう。
まるで、風が私を見てるみたい。
ううん。
見てるんだね。
そして、拾ってくれてるんだね、私の涙。
湊。
此処にいるんだね。
でも、それは此処だからじゃないよね。
私のいるところに、いてくれるのかな。
そう、想ってていかな。
空が少しずつ暗くなってきた。
きっと、雨が降るに違いない。
もうすぐ雪になるくらい、冷たい雨が。
凍えるような寒さに降る雨は、私を厳しく濡らす。
前を向け、と。
しっかりしろ、と。
『厳しさは愛なのだ』と誰かが言ってた。
辛く苦しいことも、大切な気持ちを知るために必ず必要なのだという。
今のこの辛さも、何かを得るためのものなのかな。
ただ流れる涙を止める術が見つからず、顔を覆ってその場に座り込んでしまった。
漏れる嗚咽も、少し強くなった風が消してくれる。
お昼間だというのに、空は薄暗い。
こんな日は傍にいて。
あの日も、そう願っていた。