だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
報告...ホウコク
函館旅行から帰ってきた私たちは、お父さんとママに話をすると決めていた。
別々に出かけたのに一緒に帰ってきた私たちを見て、ママの表情は固まった。
まして、湊は私の手を握ったままだったし。
「ただいま、母さん。時雨も一緒に連れて帰ってきたから」
「・・・そう、おかえり。湊、あなた――――」
「話は着替えてからね。とりあえず、部屋に荷物置いてくるから」
有無を言わせない口調で、湊はママに言い切った。
私は何も言うことが出来ずに、ただ湊の左手を強く握っていた。
引かれた力に逆らわず、私たちは二階の部屋へ向けて足を進めた。
その様子を見ていたママは、何も言葉を発しなかった。
背中に突き刺さる視線に気付かなかったわけではないけれど、どうすることも出来なかった。
玄関から動く気配のないママを残して、私たちは二人で階段を上っていった。
階段の目の前にある湊の部屋の扉が開いて、二人でその中へ隠れる。
少し強引に引かれた腕に、湊の手の感覚が強く残っていた。
どさっと大きな音を立てて、二人分の荷物が部屋の床に落ちた。
その音と同時に、私は湊の胸の中にいた。
手を伸ばして鍵の閉まる音がする。
ママの顔が頭から離れないのに、湊の強い力が私を離してはくれなかった。