だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
「湊・・・っ、どうしたの?」
必死にお願いしているけれど、ドアのすぐ近くで立ったまま動いてはくれなかった。
いつもよりも必死な湊に、違和感を感じてそっと背中に手を伸ばす。
大きな背中が、ほんの少しだけ震えた。
「・・・湊・・・?」
「もう少しだけ、このまま」
たまに見せるこういう姿が、私だけのものだと知っている。
二人で決めたことなのに、結局は湊が最初の行動を起こしてくれた。
ママの顔を見て怖気づきそうになったのは、一緒だったはずなのに。
「一緒に行こう。私の口からも説明をするから」
そっと湊の背中を撫でながら、耳元で囁いた。
小さく頷いた湊の髪が、私の頬をくすぐった。
少し手を伸ばして、湊の髪を撫でる。
そのまま小さくキスをした。
二人で目を合わせて、ゆっくりと笑った。
それぞれ着替えをして、二人で一階へ行った。
さっきと同じように、二人の手は繋がれたままだった。
大丈夫。
だって、隣に湊がいる。
私たちの気持ちが此処にある。