だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
「母さん、話があるんだけど」
湊がママに向かって真っ直ぐな目線で言った。
リビングのソファーに座っていたママが、ドアのところに立っている私たちのことを見ていた。
その表情は、少し強張った顔をしていた。
「座りなさい。潤さんはまだ帰って来ないから、先に聞くわ」
その言葉に、二人でママの向かい側のソファーに座る。
静かな空間の中で、私と湊が歩く音とソファーが沈む音がしていた。
少し下を向いて、目を逸らしていたママも、私たちが座るとこちらに視線を向けた。
今までに見たことのない、真剣なママの表情に握っている手に力が入る。
それと同じ力で、湊も握り返してくれた。
それだけで、気持ちが落ち着く。
私たちの気持ちをわかってもらおう、と頑張れる。
ママは、大きくため息をついた。
そして、私たちをじっと見つめていた。
「湊。時雨ちゃんは妹なのよ?」
ママの声は、決して私たちのことを祝福してくれる声ではなかった。
湊をじっと見つめるママの目。
笑っていないその目が、湊一人に注がれている。
「湊が時雨ちゃんを可愛がってるのは知ってたわ。見てればわかるもの。でも、あくまで兄妹として。血は繋がってなくても、兄妹なのよ」