だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
ママはにっこりと笑って湊を見据えた。
そのママに向かって、同じようににっこりと湊が笑っている。
その答えが、欲しかったのだと。
「母さんらしいね」
「ごめんね、時雨ちゃん。でも潤さんとは別のところで、忘れられない人なのよ」
「うん、分かってるよ」
「ありがとう」
私がそう答えると、湊はとても綺麗な笑顔を浮かべた。
その笑った湊から、さっきまでの冷たさが消えていた。
残っているのは、ほんのりと温かいいつもの湊。
穏やかな空気。
「俺と母さんはよく似てるな」
「何を今更。当たり前じゃない」
「だから、分かって貰えるって確信した」
「え?」
「俺は、母さんと同じ気持ちで時雨を想ってる。誰に反対されても構わない」
「あなた・・・」
「もし明日死んでしまっても、今日を時雨といるために生きたい。燃え尽きて灰になっても。その最期のカケラまで、時雨を愛してる」
この人の声は、私を簡単にダメにしてしまう。
胸に響いた言葉に、笑いたかったのに涙が先に反応した。
何度でも聞きたい。
そして、私も。
何度でも、言いたい。