だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
「ママ、私も。誰にも祝福されなくてもいい、今日を湊といたいの」
「時雨ちゃん・・・」
「湊の最期のカケラが私のものであるように、私の最期のカケラも湊のものでありたい。一緒に生きていきたいの、ずっとこの先も」
私は笑った。
涙は湊がすくってくれた。
今、この瞬間が大切だ、と想った。
何に変えても構わない、と想った。
でも、一つだけ。
ママに言いたいことがある。
「私も湊も。ママとお父さんが大切なの。本当に大切だから、二人には知ってて欲しかった。わかって欲しいと、想ったの」
言葉が詰まる。
でもあと少し、伝えさせて。
「だから、諦めたりしないから。何度でも言うよ。認めて欲しいって。誰にわかってもらえなくても、誰にも言えなくても構わない。ママとお父さんには、ちゃんと認めてもらいたいから」
届いてるかな。
我が儘で、傲慢で。
それでも、これが私たちの本音。
「私、諦めないから。ずっと伝え続けるよ。湊がいるこの瞬間が、幸せでたまらない、って」
涙を少し拭いて、真っ直ぐにママに笑いかけた。
目が合ったママは驚いた顔をして、じっと私を見つめていた。
沈黙が包む。
ほんの少しの時間なのに、とても長い時間のように感じた。
降り始めた雨の音が、静かにリビングに響いていた。