だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
昂然...コウゼン
沈黙が包む。
誰も何も言わない。
時計の針の音だけが、静かに時間を刻んでいた。
「・・・そんなに、大人になっていたのね」
ママは小さく呟いた。
苦笑いを浮かべて。
「湊のために、そんな顔をしてくれるようになっていたのね」
ママはどこか寂しそうで、でも、どこか嬉しそうだった。
その様子を、私はじっと見つめていた。
湊が笑う気配がした。
「大事にしてるからな」
「湊が大事にされてる、でしょ?」
「どっちも一緒だよ」
「違うわよ」
二人の言い合いに口を挟むわけにもいかず、私はただ黙っていた。
二人の間の空気が、緩くなるのを感じていた。
「あんた、こんなに可愛い子掴まえて。潤さんに殴られても知らないわよ」
「覚悟の上だよ。もう、どうしようもないんだ」
そう言って、湊はそっと私の方を見た。
その目は、もう大丈夫、と教えてくれた。
安心していいよ、と。
優しく私の頭を撫でてくれる、冷たい手。
この手に守られているんだ、とわかる。