だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
「結局湊に任せっきりで。私、何も出来なかった」
ママに報告したときも、お父さんを説得することも。
湊が一人で頑張ってくれた。
私たち二人のことなのに、寄りかかってばかりいたことが、とても悔しかった。
「それは、違うよ」
湊が優しく私に言った。
目が合うと、オレンジの明かりが湊の瞳で揺れていた。
「言葉にして伝えるのは、僕でいい。二人に伝えるとき、時雨の気持ちが真っ直ぐだったから言えたんだ。もし時雨の気持ちに迷いがあったら、説得なんて出来なかった」
そんな風に想ってくれていたなんて。
胸の中がじんわりと温かくなる。
「時雨の気持ちが、今の二人を守ってくれたんだ」
私の気持ち。
余分なものをなくしたら、残るのは本当に簡単な気持ち。
ただ、湊が好きなだけ。
十五年越しの想いを、ただ貫いただけだったのに。
それが湊の力になっていたのなら、そんなに嬉しいことはないと想った。
そっと手を引かれて二人で窓際に立つ。
少し寒くて身震いをすると、後ろから抱えるように抱き締められた。
窓の鍵を開けて、そっと外の空気を部屋に流し込む。
冷たい空気と冷たい雨。
けれど、どこか優しい雨。