だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
揺蕩...タユタウ
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あの日と同じ、冷たい雨が私に降り注いでいた。
傘を差すこともせず、ただその場に座り込んでいた。
手を伸ばして墓碑の名前に触れてみては、それが目の前にあるのだ、と理解する。
そして、どうして抱き締めてくれないのか、と罵ってしまいそうになる。
この苦しさが、貴方のいなくなったことを受け止めている痛みなら、どうすればこれから救われるのか。
一人では出ない答えを、何度も繰り返していた。
やっぱり湊は特別で、他の人では貴方の影を埋められない。
そんなことを確認するために、此処にいるわけじゃない。
湊のカケラを受け止めたくて、此処にいる。
けれど、一人では息をするのも苦しい。
抱えてしまえば動けなくなりそうで、どうすることも出来ないでいた。
襲ってくる。
悲しみが。
絶望が。
苦しさが。
孤独が。
縋ってもいいかな。
一人で支えきれないものを、誰かと分け合ってもいいかな。
今なら、ママの気持ちが良く分かるの。
湊が存在していた事実を愛してる。
今もなお。
こんなにも、色濃く。
それでも誰かを求めるなんて、思いもしなかった。
まさか、こんなに救われていたなんて。
助けて欲しいと想うのは、あの人。
助けて。
傍にいて。
そう、想う。