だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
視界が急に暗くなった。
目の前の黒に、思わずしがみついた。
――――――知ってる、この腕――――――
「・・・圭都さんっ・・・!」
遠くでしていたはずの車の音が近付いてきていた。
そして、すぐ傍で停まる音がした。
聞きなれたエンジン音。
逢いたかった。
心の底から。
「何やってんだよ。こんな風になる前に俺を呼べよ」
力強い腕の中で、しっかりとその背中に手をまわした。
触れた箇所から安心感が湧く。
こんなにもこの人の腕に守られていたのだ、と深く知る。
大切にしてくれていたのだ、と。
「・・・逢いたかった」
考えて言った言葉ではなかった。
気付けば口に出していた。
逢いたかった。
この人に。
湊のカケラを一緒に受け止めてくれる人に。
逢いたかったのよ。
私の言葉に、圭都さんの腕の力が増した。
息が苦しくなってもいい。
その強さが、今ここにいるのだ、と教えてくれる。
涙が少しずつ止まっていく。
頭の中が落ち着いてくる。
冷たい雨が二人に降り注ぐ。
ふと顔を上げると、雨に濡れた圭都さんの顔が目に映った。