だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
メールを返すのは、あまり得意ではない。
というより好きではない、の方が正しい気がする。
もともと何か用事があれば電話をしてしまうことが多いので、メールをする機会が少ないこともある。
それに、メールの文面はなんだか無機質で、読み手の気持ち次第で内容が変わってしまう気がした。
言葉で伝えなければ、上手く伝えられない。
そう、想っている。
そういえば着信もあったので、履歴を確認する。
留守番電話のマークはついていないので、急ぎではないようだ。
着信履歴の名前。
それは意外な人物だった。
『篠木 大悟』
篠木が私に連絡をしてくることなんて、いままでに数えるくらいしかなかった。
会社から少し外出している時とか、飲み会の連絡とか。
今日は平日なので、何か仕事の案件かもしれない。
篠木は今日、第一と同行している。
森川がいない仕事が増えてきたので、右も左もわからず困っているのかもしれない。
そう思うと、なんだか心配になってきた。
留守番電話はなかったけれど、折り返し連絡をしてあげよう、と思って席を立つ。
座席を離れて、携帯電話で通話が出来る場所まで移動する。
少しうるさいけれど、話くらい出来る、と思って篠木に電話をかけた。