だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版





「聞いてくれるか?俺の話」




力なく頷く。

聞くのが怖いけれど、聞きたかった。

二人が兄弟だというのなら、色んなことに納得出来る気がした。




「大学に入って、同じサークルに湊がいた。最初は似てるな、ってみんなに言われてさ。それからすぐに仲良くなった。湊は俺にずっと優しかったから」




話を始めた櫻井さんは、少し遠い目をしていた。

『湊さん』と呼んでいた時よりも、ずっと身近な人に感じた。




「最初の夏休み前、毎年墓参りに行くって話をしててさ。よく、話に出るだろう?どこに行く、とか。元々父親が死んでたことも話をしてたから。お盆くらい行ってやらなきゃな、って」




タオルで濡れた自分を拭きながら、圭都さんを見つめていた。

私と視線を合わせない圭都さんを見ていた。




「それで、たまたま墓の話になったんだよ。どこにあるのか、って。小さい頃からお気に入りの場所だったから詳しく説明をしたら、同じ墓地だったんだ。偶然って重なるな、なんて話をしてた。その時は、まだ」




偶然。

本当に、そうね。


その偶然が、とても恐ろしいものに想えた。

なんだか、そう想った。




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