だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
「それで、家族の話をよくするようになった。実は、俺の母親は未婚で俺を産んでるんだ。父親の名前だけは聞かされてた。でも、逢うことは出来なかった。俺が生まれる前に死んでしまったから」
未婚の母。
そんな覚悟を持って、圭都さんを産んだお母さんをとても尊敬する。
私にはきっと出来ないのだろうな、と想う。
とても強くて、素敵な人。
それだけで、わかる。
確か、湊のお父さんが死んでしまったのは二歳の時。
それから、ママはずっと一人で湊を育ててきた。
お父さんと再婚するまで、ずっと。
「父親の名前を湊に言ったとき、顔色が変わったんだ。それで言われた。自分の父親も『柴田 快斗』だって」
柴田 快斗
(シバタカイト)。
間違いなく湊のお父さんの名前。
それを聞いた湊は、どんな風だったのだろう。
私は圭都さんの話すその内容を、どこか他人事のように聞いていた。
とても身近な二人のことだと、なんとなく理解はしていたけれど。
「湊は驚くほど冷静だった。それで俺に言うんだ。『じゃあ、兄弟じゃないか』って。いとも簡単に」
弱いところを簡単に人に見せる人ではない。
どんな動揺も、あの笑顔で隠してしまう。
狡い人。