だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
選択...センタク
冷たい雨は、容赦なく車の窓に当たっては落ちる。
雨の音がだけが、この車を包んでいる。
二人の息遣いはとても近いのに、圭都さんとの距離が遠く離れてしまったような気持ちが拭えなかった。
「湊に似ているのは当然なんだ。だから余計に、湊抜きで俺を見て欲しかった。でも、そんなのどうでもよかったんじゃないか、って想う」
湊、抜きで。
そんなことが、本当に出来るだろうか。
「俺は、湊を好きな時雨を好きになったんだ。それでいい。支えてやるよ、どんなことでも」
どんなことでも。
湊を想ったままの、私でも。
湊の弟が、今目の前にいる事実。
今はまだ受け入れがたい。
けれど。
こんなにも湊を想い出す理由がわかった。
似ていて、当然なのだから。
何も言わない私を見て、櫻井さんは少し苦しそうに笑っていた。
私は、この人の瞳の奥をどれだけ知っているのだろう、と怖くなった。
まだ知らないことが沢山ありそうで。
私に隠している事が、もっと。
急に不安になってしまった。
胸が苦しいくらいに締め付けられる。
これから先、この人と一緒にいることは、ママを苦しめることかもしれない。
いつか、この人とママを逢わせる時が来たら。
どうなって、しまうんだろう。