だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
けれど、今私の隣にいて欲しいのはこの人しかいない。
櫻井圭都という存在。
本当に大切に想い始めている。
逢いたい、と想うことも増えている。
湊の弟。
ママの最愛の人の息子。
社会は許してくれない子供。
櫻井さんの抱えているものも、十分にわかった。
それと同時に、ママを心から傷つける存在であることもわかった。
どちらも大切なのよ。
どちらも選べないよ。
気が付くと、私は圭都さんにしがみついていた。
驚いたのか私に手を回すことも忘れて、私を受け止めている。
ようやく抱き締められた時、私は泣いてしまった。
溢れてくるものを止めることなんて、出来るわけがなかった。
「・・・圭都さんのこと大切だよ」
心からそう想う。
この人が支えてくれたから、こんなにも湊と向き合えた。
この腕の中の感触が、湊と同じ細胞でこの人をカタチ造っているのだと知った。
この人がどんな気持ちで、湊の死を受け入れたのか。
自分と母親を許し、大切にしてくれた湊を失った気持ちは、他の誰にもわかってもらえないものだろう。
まして、兄弟だなんて。
きっと誰も知らない。