だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
「・・・でも、ごめんなさい。私にとってはママも大切な人なの」
最愛の人も、湊も。
みんなママを置いていってしまった。
それでも変わらないママ。
どれだけの気持ちを、心の中に隠しているのか、誰にもわからない。
その傷もふさがらないまま、櫻井さんを合わせることなんて。
そんなこと、出来るわけがない。
私と一緒にいるのが、存在さえ知らない湊の弟だなんて。
ママに耐えられるはずがない。
「選べなんて言わない。隠し通す事だって出来る。それでも構わない。時雨と一緒にいれるなら」
その言葉は嬉しいけれど、受け入れられない。
だって、それを受け入れてしまえば、湊の言葉を否定することになる。
誰も不幸じゃない。
それなのに、自分の存在を隠すだなんて。
そんなこと、させられるわけがない。
涙を拭うこともしないまま、少し離れて圭都さんを見上げる。
目が合うと、心配そうな顔が見えた。
こんな顔をさせたいわけじゃない、と想うのに。
いつもみたいに笑っててよ。
意地の悪い顔も、わざと拗ねたような顔も。
私にしか見せない、優しい顔で笑ってよ。
――――――貴方のそんな顔を見るのも、最後かもしれないから――――――