だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
腕をぐっと伸ばして、圭都さんの身体を引き離す。
離れた熱に涙がこみあがるけれど、ぐっと堪える。
不安そうに揺れる顔を見たくなくて、俯いてしまった。
きっと、どうしていいかわからずにいる。
離された手に力が入っていないから。
「少し、一人になりたい」
出来るだけ冷静な響きになればいい、と想った。
貴方の耳に届く私の声が、可能な限り傷口を広げなければいい、と。
「それって・・・」
熱のない声が、私の耳に届く。
そんな声、しないで。
決心が鈍るから。
ずっと気付かないふりをしていたのだ、と今わかった。
湊を想い出す度、一緒に圭都さんも想い出していた。
それで、傍にいて欲しいと想っていた。
本当はとっくに好きになっていたんだ。
この人の優しさも想いも強さも。
惹かれてやまないもなのだ、と。
当たり前のものは、いつも特別。
それに気付くのは、いつも少し遅い。
失くす時にしか、わからないなんて。