だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
「そのままの、意味です。今は櫻井さんとは一緒にいられません」
心の中で、圭都さんと呼べるようになってきたのに。
それに、ブレーキをかけるように言った。
口に出す言葉で、自分の気持ちを押し込めた。
「・・・櫻井さんって、呼ぶなよ」
力なく出たその言葉に、反応はしなかった。
辛い時に辛くない顔をするのは、昔から得意なのだ。
「ママのことを考えたら、一緒にいられないですよ。わかってください。『櫻井さん』」
名前を強めの声で言った。
深く、この人に響くように。
もう圭都さんとは呼べないのだ、とわかってもらうために。
「・・・かよ・・・」
「え?」
「お前はそれでいいのかよっ!!」
叫ばれたその声に、驚いて固まってしまった。
この人から目を離すことが出来なくなった。
「お前の気持ちはどこにあるんだよっ!!俺自身に答えをくれ、と!周りとかじゃなく、俺のことが『好き』か『嫌い』かでいいんだよ。そんな簡単な答えも出せないのかよ・・・っっ!!」
必死に紡がれた言葉は哀しさをつれてきた。
切なさばかりが滲む。
胸が苦しい。