だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
「・・・やめて、圭都さん・・・っ」
涙声で小さく訴える。
届いて欲しい、という想いではない。
ごめんなさい、という想いを込めて。
その言葉と同時に圭都さんの手が止まる。
熱っぽい視線を向けられたまま、抑えられていた手の力が弱まる。
けれど、私は動けずにいた。
「俺の名前がすんなり出るくらい、俺のことを考えてるんじゃないか」
辛そうな顔をしながら、少しだけ笑っていた。
圭都さんのその顔から目を逸らすことが出来ない。
「お前も湊と一緒だよ。辛い時ほど大丈夫だという顔をする。そんなの、『助けて』って言われてるみたいじゃないか。本音で話せよ、俺には全部」
私の『大丈夫』はむしろ、『助けて』と同じ響きを持っている。
この人は、それもわかっていた。
私の本音を聞きだすために強い力でねじ伏せた。
「俺のこと好きだ、って言えよ。それで何の問題もない。お前がいてくれたら、何があっても大丈夫だから」
私がいれば。
何があっても。
本当に?
「湊と同じ気持ちで、守ってやるよ。湊の分も」
湊の分も。
それは、狡い言葉。
それは、圭都さんにしか出来ないこと。
同じ細胞を持っている人だから、出来ること。