だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
さっきまでの乱暴さは消えて、優しく抱き締められる。
車内の狭さで身動きが取れない私は、それに素直に従った。
強い力ではなく優しくされることの方が、胸の奥が苦しくなる。
またママ達にわかってもらおう、と想えるのかどうかはわからない。
湊の時のように、揺るがない気持ちでいられる自信もない。
それでも、この人のぬくもりが今は欲しい。
気付いてしまったから。
無くすと想った瞬間に。
こんなにも、いとしい。
この手を離せないよ。
湊と同じ血の流れるこの人を。
湊と同じぬくもりのこの人を。
湊と同じ想いでいるこの人を。
「湊のお母さんにも、苦しい想いをさせるかもしれない。時雨だって、また辛くなるかもしれない。それでも諦めたりしない。お前がいれば、それでいい」
貴方が一番苦しむのに。
それでもいい、と言っている。
「お前が笑ってくれればそれでいい」
そんな言葉反則なのに。
それは、私の台詞だよ。
ただ、笑っていて。
生きて、呼吸をしているだけで。
此処に存在しているだけで。
それだけで、いい。