だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
緑の映える街。
海岸線沿いの長い道。
懐かしい市電と車が交差する。
街を見下ろす場所と、坂が沢山ある。
それと、教会。
大きな公園も。
函館に着く頃には、きっとオレンジ色が降り注ぐに違いない。
駅のホームは、眩しいくらいに夕日が差し込むはずだ。
その色は、柔らかく暖かい。
篠木はきっと一日泊まっていくだろうから、一緒にご飯でも食べに行こう。
『廣瀬さん』がどんな人かわからないけれど、御堂さんの話が聞けることが嬉しい。
目的のない旅が、少し楽しみになってきた。
函館は仕事でよく行くことが多いので、なんだか馴染みの街のように思う。
決していろんなところを観光したわけではなく、ただ仕事で来ているだけだ。
それでも、駅が、街が、空気が。
迎え入れてくれるような気がした。
窓際に置いた紅茶は、だいぶ常温に近づいていた。
ペットボトルに口をつけて、中身を口に入れる。
仕事の頭に切り替わってしまった脳を、少し落ち着かせる。
今日の夜は何を食べようかな、とそんなことばかり考えていた。
横目に流れる景色は、少しずつ優しい色に包まれていった。