だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
『お疲れ様です。もう着きましたか?』
会社に戻っているらしい篠木は、いつもの調子で電話に出る。
周りからは声が聞こえていたので、みんなもう社内に戻っているのだろう。
「お疲れ様。さっきチェックインしたからもう大丈夫。明日の予定、確認していい?」
『了解です。ちょっと待ってください』
がさがさと音を立てて、何かを探している。
多分、手帳を探しているのだろう。
『お待たせしました。明日は昼ごろ着のJRで向かいます。とりあえず着いたら連絡します。ホテルは今日押さえるので、どのホテルか教えてください』
「わかった。先方との合流は?」
『廣瀬さんはいつでも、とおっしゃってました。なので、十五時にホテルロビーで待ち合わせにする予定です大丈夫ですか?』
十五時。
多分お話をして解散、なんて事はない気がした。
ただ、中途半端な時間なので夜ご飯でも、なんてことも難しいだろう。
「わかった。観光、ってわけにもいかないよね。支社もあるんだし」
『いえ、函館には年に数回ということでしたし、問題ないかもしれません』
「じゃあ、少し観光ルートの確認お願い。あと、可能であれば廣瀬さんの会社に伺えるといいね。商品扱ってる百貨店、押さえておこうか」
『了解です。こちらで準備します。あと…』
「夜だよねぇ…。うーん、実はあんまり詳しくないのよ。水鳥さんと部長は詳しいだろうけど。忙しそうだったら、櫻井さんでもいいけど、少しリサーチもお願いできる?」