だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
まとめたメモを見ながら考える。
櫻井さんの事。
水鳥さんに直接、私の口から相談してもいいのだろうか。
多分、櫻井さんとはとても仲がいいのだろうから、聞いても複雑なのかもしれない。
でも、可愛がってもらっている自覚はある。
何より、何を言っても水鳥さんは動じない気がした。
ただ、何から伝えればいいのか。
私にはまだ分からなかった。
櫻井さんとの話をするなら、湊の話も伝えなくてはいけないから。
他の人に湊のことを話すのは苦しい。
色んなものを受け止めて初めて、私の口から湊の全てを伝えられるのではないだろうか。
まだ受け止められない私は、湊を表す言葉を持っていないから。
あの人を、想い出として語ることなんて出来はしないから。
とりあえず、会社の電話にかけるので今はそんな話にはならないだろう。
ただ、荷物を取りに行ってもらった時に、きっと電話が来る。
水鳥さんは、そういう人だから。
電話のリダイヤルで会社の番号を探す。
また水鳥さんが、電話番号を見て私の名前を呼ぶんだな、と思うとくすりと笑いがこみ上げた。