だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
待宵...マツヨイ
八年前。
私は、函館の駅で待ち合わせをした。
金曜日だったけれど、大学の授業はサボってしまった。
お父さんとママには、優希と旅行に行くことにしてある。
優希は小学校からの親友で、私と湊のことを知っている唯一の友人。
小さなころから、『時雨は湊さん以外の人が目に映らない』と言われてきた。
近くにいる優希には、私がどれだけ湊しか見ていないか、すぐにわかってしまったのだろう。
それと同時に、湊がどれだけ私を甘やかしているのかも、優希にはお見通しだったのだろう。
旅行のことを話した時、優希は呆れたように笑っていた。
そして、とても嬉しそうに私を抱き締めてくれた。
『時雨が幸せなら、それでいい。胸を張っていいんだよ』
優希の言葉は、いつも私の背中を押してくれる。
誰にも言えない私の気持ちを、そっと支えてくれていた。
大学は離れてしまったけれど、時折心配をして電話をくれる。
他愛もない話をして、近況報告をする。
たまにダブルデートに誘ってくれるが、恥ずかしくてなかなか足を運べずにいた。
私と湊が昼間に出掛けてもおかしくないように、いつも気にかけてくれる優希の気持ちが、本当に嬉しかった。