だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
私が仮面をかぶる度に、湊は私を甘やかしてくれた。
夜の公園も、車の中も。
車の少ない道路を走ることも。
二人に隠れて、湊の部屋で寝ることも。
小さな秘密を湊のぬくもりが隠してくれる。
そんな時間を、ゆっくりと積み重ねてきた。
二人でお風呂に入りながら、夜の空を見上げたい、と湊は言った。
私は一緒にお風呂に入るのを嫌がった。
でも、そんなこと湊にとっては想定内のことだったようだ。
『もう予約しちゃったから』と言われてしまっては何も返事を返せない。
想うことを想うままに。
湊はいつまで経っても湊だな、と想う。
今日は天気がいいけれど、明日からは少し雨が降るかもしれない。
私達にとって、それはとても嬉しいことだった。
湊と過ごす時間。
その記憶の中は、雨の日ばかり。
憂鬱だった雨の日が、大好きになった。
静かで、優しい時間。
約束の時間まであと少し。
湊が迎えに来てくれたら、一番に見つけて私が駆け寄って行きたいと想った。
目の前を通り過ぎるバスを見ながら、早く逢いたくてたまらなくなっていた。