だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
夜色...ヤショク
連れて行かれた部屋で、私は思わず息を呑んだ。
高層階から見える窓全面の海は、街の光を少しずつ反射させている。
外には客室露天風呂があり、かすかに白い湯気を上げていた。
その奥に、白く強い光を放つ大きな月がある。
高い空に張り付いたような大きな丸は、私達に目線を合わせてくれているようだった。
部屋の端に荷物を置いた湊に、窓際まで導かれる。
窓を開けると、湊は私の肩をぐっと引き寄せた。
「綺麗でしょ。海も、月も、光も」
そっと私の頭を撫でる手が嬉しくて、湊の肩にもたれる。
何も言わない私に、満足しているのがわかる。
「だから、一緒にお風呂に入りたい、って言ったんだ」
恥ずかしい、とかそんな感情よりも湊と一緒にこの景色を見たい、と想った。
それを言葉にしてはくれないけれど、きっと同じ気持ちだと想った。
湊にぎゅっと抱きついて、頬に唇を寄せる。
それにあわせるように、少しだけ顔を寄せてくれる。
顔を離すと湊と目が合った。
目の中に私がいることがと、ても嬉しくなって、そのまま湊にキスをした。
私に触れる手に、少しだけ力が入った気がした。