だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
大きなキャリーケースの中に五日分の着替えと荷物を詰め込む。
一年に一度の贅沢だと思って、長期滞在する予定なのだ。
ホテルはビジネスホテルで連泊すれば比較的安く済む。
温泉に入りたければ、日帰り入浴でもいいだろう。
必要最低限の荷物を詰め込む。
簡単なものさえあれば大丈夫だろう。
旅支度はいつも簡単だ。
余分なものを持たない主義なので、綺麗に詰め込めば一つの荷物にまとまってしまう。
女の人は荷物が多くなるのが常なのに。
自分のさっぱり加減に驚いてしまう。
下着。
着替え。
化粧品。
入浴用品。
カメラ。
小さな折り畳み傘。
これさえあれば何処にだって行ける気がした。
寒くなったときの為に羽織だけは入れておかなくては。
チームのみんなには旅行に行くことを言っていない。
『どこか行くなら内緒で行きなさい。そうでないと、仕事で呼ばれちゃうから。まぁ、仕事以外でも呼ばれるかもしれないけどね』
水鳥さんにはそう言われた。
まだきちんと話していないけれど、水鳥さんには色々な情報が筒抜けなのだろうな、と思った。