だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
のぼせそうに熱い身体を抱えられるようにして、部屋の中へ連れ戻される。
いつの間に消したのか、部屋の中は真っ暗だった。
窓辺の布団の上に、そっと下ろされる。
身体の下に、乾いたバスタオルが敷かれていた。
薄いそれが、やけに現実味を帯びている。
そっと閉められた大きな窓からは、まだ満ちていない大きな月が私達を見ていた。
照らされた湊の顔に触れたくて、そっと手を伸ばす。
その手を包むようにして、自分の頬に当てる湊。
本当に綺麗な顔。
目の中がガラス玉のよう。
「帰ったら、母さん達に話そうか」
「え・・・?」
「これからのこと。きっと、わかってくれる」
「でも、それは・・・」
そっと微笑んだ湊の顔を、震える手でなぞる。
現実のものだと、確かめるように。
今。
この瞬間。
誰も壊さないで。
時間を止めて。
いっそ私の息さえ止めて。
そう、願った。
「もうこれ以上、隠すことは出来ないだろう?きっと、二人とも気付いてる」
そうかもしれない、と本当はずっと想ってた。
けれど、そんなことない、と必死に否定した。
日増しに募る想いの分、私達の表情も距離も、上手く掴めずにいることを感じていた。