だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
「わかって、くれるかな」
不安から、小さな声になってしまった。
お湯から上げられた身体は、少し熱を失って冷たくなっていた。
それを包むように、優しい腕が私を包む。
大きな手に抱きかかえられる。
不安で溢れそうな心が、その腕の熱に溶かされていく。
「わかってもらうまで、何度でも伝えよう。どれほど、かけがいのない存在なのかを」
その言葉に小さく頷いた。
不思議と不安はなかった。
堪えた涙だけが流れた。
自分の想うこと。
自分のしたいこと。
それを貫くこと。
一人では難しいことも、隣にこの人がいるということが、私を強くした。
それと同時に、ずっと二人でいるために何が必要か。
この人が必死に考えていてくれたことが、本当に嬉しかった。
嬉しさで泣ける弱さ。
決意で得た強さ。
初めての私を、また創ってくれた。
「ありがとう。何だって出来るよ、湊がいれば。私も、わかって欲しいと想ってた」
月に照らされた湊はとても神秘的で、でもどこか儚げだった。
抱き締められた腕の力強さに、此処にいる湊の存在を想った。