だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
自分の部屋に戻って水鳥さんに電話をかける。
水鳥さんは私の家で荷物を探してくれていた。
大体の物の位置がわかっているので、ほとんど準備出来たとのことだった。
本当に申し訳ない、と思いながら、水鳥さんがいて助かった、とも思う。
ある程度準備した後、水鳥さんが家を出たときには、もう二十三時を過ぎていた。
「すみません、こんなことお願いしちゃって」
『いいのよ。むしろ、長期休暇中に仕事をさせて悪いわね』
私がいいえ、と笑うと水鳥さんも笑ってくれた。
困ったわね、と言うような声が聞こえてきそうな笑い声だけれど。
『ねえ、シグ』
そっと水鳥さんは私に問いかける。
その声は、とても真っ直ぐ私に伸びてきた。
『ゆっくりと考えられるといいわね。色んなこと』
あぁ。
水鳥さんは全部知っている。
それでも、櫻井さんの肩を持つわけではなかった。
私を見守ってくれているのだと知った。
優しい声に目を閉じる。
月が映る海を想い出す。
「そうですね。いい機会なのかもしれません。今度ゆっくり話を聞いてもらえますか?」
もちろん、と言っていつもの声で答えてくれた。